本社業務においてカーボンネガティブを達成しました2021.12.01
ミッション:循環型社会実現のため、エコハウスのテクノロジーを非住宅に転用し木造高断熱高気密で建築した木下建工新本社。
2020年11月末に移転し、12月より各種データを計測しています。
©UEDA Hiroshi
■本社業務でのカーボンネガティブを達成
さて丸一年たち本社業務でのカーボンゼロを目指した新本社建設プロジェクトの結果、大きくカーボンネガティブを達成することができました。
売電量 16,957kWh 買電量 7,096kWh(2020/12/1~2021/11/30)
※計測値は計量法のもと有効期限内の検定済計器よりHEMSに連携し確認。
自家消費はプラマイゼロですので、電力量は2020年12月~2021年11月の、本社業務すべてとなります。冷暖房、換気、給湯、照明といった建物の消費エネルギーだけではありません。オフィスなので他には思いつくだけで以下のようなものが挙げられます。
☑サーバー(9月に更改して3か月並行稼働しました)
☑NW機器
☑複合機
☑PCとディスプレイ
☑会議室の大画面モニター2台
☑監視カメラとディスプレイ
加えて、銀行や他社に行く事務用車リーフの充電分(走行距離 5,500km)も含んでいます。
新本社はエコハウス3件分の面積で、PV19.2kW, PCSは5.5kWx3で16.5kWです。決して太陽光をたくさん載せているわけではなく、最近のエコハウスは9.9kwまで載せることが多いので、むしろ少なめといえるかと思います。
これまでと同じ人たちが、同じPCを使い、同じ業務内容で、変わったのは建物と事務の車だけでカーボンネガティブに。
建物の性能が変われば、温室効果ガスの排出は大きく改善されることを端的に示していると思います。
©UEDA Hiroshi
■発電量と自家消費率について
16.5kWというPCSの容量は、屋根面積ではなく、使用電力量をすべて賄う観点から発電量を25,500kWhと推計し決定しました。
4月にHEMSのトラブルがあり一部データが欠落してしまったのですが、推定すると発電量はほぼ当たっています。
推定発電量 ー 売電量 = 自家消費 ですから計算すると、発電した電気の30%を自家消費したことになります。
ただ季節的にはグラフの売買電量の通りで、社会的に需給が厳しい冬季は自家消費率が高く、春先は売電が多い結果になりました。
おそらく今後は低圧の太陽光売電単価も、冬季の夕方は高くなるなどの方向に進むでしょう。
■目指したのはZEBではない
最近断熱への注目の高まりとともに、視察依頼が増えてきました。
その中でZEBを見に行きたいとか、ZEBすごいですねと言われると、少しもやっとします。
ZEBは便利な言葉でわかりやすいのですが、建物のエネルギー消費のうちOA機器等のエネルギー消費量はZEBの計算からは除外されています。
建物で使われているエネルギーってどんなもの? | 環境省「ZEB PORTAL – ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ)ポータル」
建物の性能をあわらす目的からすれば、それが適切なのはわかるのですが、OA機器等が含まれずにゼロが素晴らしいと言われると違和感を感じるのは当然かもしれません。
ZEBの建物で仕事をしても、カーボン排出量がゼロになるとは限らないからです。
待ったなしの脱炭素が必要な状況において、断熱、日射取得、再生可能エネルギーで大きくマイナスが当たり前の世の中になって欲しい。
建築にはまだ貢献できる余地が大きく残されています。ぎりぎりZEBでOKではなく、できるならばパッシブハウスやローエネジービルディングを目指す姿勢がほしいです。木下建工新本社のようなローエネジービルディングのオフィスがたくさん生まれれば、社会の二酸化炭素換算排出量は大きく改善します。
また私たちもこれで十分だと思ってはいません。目標の売電量>買電量はEVを含め達成でき、今後コワーキングなどこの建物に関わる人数が増えてもまず問題ない数字です。
ですが雪が降る日や日没後など、社会全体でエネルギーが必要となるときに購入している事実があります。
一応今もエコキュートは昼間焚き上げにしていますが、太陽熱給湯の導入や発電時間以外の負荷低減など一層の省エネがまだできる部分があります。
ただし2020年度の契約のため、FIT法で産業用低圧(10kW以上50kW未満)区分だと、自家消費して売電する割合を70%未満にしないといけないのが悩ましい点です。
木下建工にはEVがあるので発電した電気で充電することでぎりぎり達成できましたが、これ以上冷暖房需要の少ない建物だと蓄電池も併用しないと難しいでしょう。